野生動物

令和4(2022)年度の堅果類等の豊凶調査 全国まとめ|ヒグマ・ツキノワグマ

 秋期の堅果類(ドングリ類)などはツキノワグマの重要な餌資源となっており、実なりの状況(豊凶状況)に大きな影響を受けます。特に、実なりの悪い年(凶作年)には人里付近へ出没する可能性が高まると考えられています。そのため、各地域では堅果類等の豊凶調査が実施され、秋期の人里への出没が予測されています。本ページでは全国で実施されている堅果類等の豊凶調査についてまとめました。

堅果類等の豊凶調査とは

 秋期の堅果類(ドングリ類)などはツキノワグマの重要な餌資源となっており、実なりの状況(豊凶状況)に大きな影響を受けます。特に、実なりの悪い年(凶作年)には人里付近へ出没する可能性が高まると考えられています。そのため、各地域では堅果類等の豊凶調査が実施され、秋期の人里への出没が予測されています。

主要な堅果類

コナラ

 コナラはブナ目ブナ科コナラ属に分類される落葉広葉樹であり、北海道・本州・四国・九州に分布しています。

クリ

 クリはブナ目ブナ科クリ属に分類される落葉紅葉樹であり、北海道・本州・四国・九州に分布しています。

ミズナラ

 ミズナラはブナ目ブナ科コナラ属に分類される落葉紅葉樹であり、北海道・本州・四国・九州に分布しています。

北海道

北海道

北海道

 北海道では、秋のヒグマの主要食物のミズナラ(299地点)・ブナ(24地点)・ヤマブドウ・サルナシ(226地点)の実なり状況について、関係機関等とともに平成17年度から実施されています。

 令和4年度はミズナラ・ブナが広範囲で不作で実なりの悪い傾向が見られたが、ヤマブドウ・コクワは並作で概ね例年並みの状況と報告されています(北海道環境生活部自然環境局野生動物対策課ヒグマ対策室,2022年10月11日発表)。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

 

ミズナラブナヤマブドウサルナシ
不作不作並作並作

東北

青森県

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。

 今年は38地点でブナの開花状況の調査が行われ、豊作であると予想されていましたが、結実状況の調査では『並作』であると報告されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
豊作並作

岩手県

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶状況調査を実施しています。

 今年は23地点でブナの開花状況の調査が行われ、並作であると予想されており、結実状況調査の結果も同様に『並作』であると報告されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
並作並作

宮城県

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶状況調査を実施しています。

 今年は6地点でブナの開花状況の調査が行われ『豊作』であると予想されていましたが、結実状況の調査では『凶作』であると報告されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
豊作凶作

秋田県

秋田県

 秋田県では、5地域でブナの開花状況を基に、豊凶予報が発表されています。

 今年は凶〜並作・豊作であると予測されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

調査地点ブナ
八森凶〜並作
森吉山凶〜並作
田沢湖豊作
東成瀬豊作
鳥海豊作

東北森林管理局

  東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。

 今年は54地点でブナの開花状況の調査が行われ、『豊作』であると予想されていましたが、結実状況調査の結果では『並作』であると報告されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
豊作並作

山形県

山形県

山形県の森林面積(約15万ha)の約22%を占める天然のブナ林は、秋期の野生動物の食料として大きな役割を果たしています。山形県では、森林の生態系の変化や野生動物の生息の影響を把握するためにブナの豊凶調査が実施されています。

 今年の結果(ブナ)は、豊作5か所、並作7か所、凶作2か所と、全体的に並作〜豊作が多いと予測されています。結実状況調査の結果では、『並作』であると報告されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 並作
  • 豊作


調査地点ブナ
湯の台豊作
羽黒山
関川並作
沼の台並作
西小俣豊作
与蔵峠豊作
鍋越峠並作
弓張平並作
入田沢凶作
月山自然植物園並作
花立峠並作
黒伏豊作
蔵王(鳥兜)豊作
駒立凶作
徳網並作

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。

 今年は21地点でブナの開花状況の調査が行われ、並作であると予想されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
並作並作

福島県

福島県

 福島県では、会津地方・中通り地方でブナ・ミズナラ・コナラの調査が実施されています。

 令和4年度はブナは豊作、ミズナラ、コナラは並作であり、昨年度と比較すると、堅果類(ブナ、ミズナラ、コナラ)の結実状況が良くなったことから、晩秋にかけて人里への出没が少なくなることが予想されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

ブナミズナラコナラ
豊作並作並作

関東

栃木県

栃木県

 栃木県では、林業技術センターにより8月〜9月に高原・県北・県南・奥日光地域でミズナラ・コナラの豊凶調査が実施されています。

 令和4年度は県北地域のミズナラ・コナラの結実が改善していますが、高原地域・県南地域のコナラの結実は悪化しています。特に、県南地域はミズナラ・コナラともに不良(凶作・不作)となっています。

高原地域
ミズナラコナラクリブナイヌブナ
並作凶作並作並作豊作

県北地域
ミズナラコナラクリ
並作不作並作

県南地域
ミズナラコナラクリ
凶作不作並作

奥日光地域
ミズナラ
凶作

群馬県

群馬県

 群馬県では、9月上旬から中旬に利根沼田地域でブナ・ミズナラ・コナラ・クリ・ミズキの調査が実施されています。

 令和4年度の堅果類の豊凶は「不作」であると報告されています。「不作」の年には秋期に人里へのクマの出没が増加する傾向となることから、クマとの遭遇による人身事故や農作物被害などへの注意が呼びかけられています。

 

ブナミズナラコナラクリミズキ
不作不作不作並作大凶作

神奈川県

神奈川県

 丹沢山地では、今年の豊凶調査の結果は堅果類(ブナ、ミズナラ、コナラ等)の実りが例年より悪くなると予想されており、クマの出没が増加する恐れがあると考えられています(神奈川県HP)。

 2022年 未発表

ブナミズナラコナラ

中部

新潟県

新潟県

 新潟県では、7月1日〜8月31日に、全県356地点(佐渡市・栗島浦村を除く)でブナ・ミズナラ・コナラ・クリ・オニグルミの調査が実施されています。

 令和4年度の豊凶は、新潟県全体としては「並作」でしたが、地域や樹種によりばらつきがあり、冬眠前のツキノワグマがエサを求めて人里へ出没する可能性もあると予想されています。特に、中越・上越では結実状況が良くないため、注意が必要と報告されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

ブナミズナラコナラクリオニグルミ
並作並作並作並作並作

富山県

富山県

 富山県では、全県でブナ(15地点)・ミズナラ(16地点)・コナラ(10地点)の豊凶調査が実施されています。

 今年は大量出没と関係が深いブナとミズナラは、凶作となった過去の大量出没年より作柄が良く、里山に生育するコナラは並作です。 この結果から、今年の秋はクマが平野部へ大量出没する可能性は低いと予想されています。ただし、ミズナラとコナラには地域によって凶作地点もあることから、山裾の集落周辺を中心にクマの出没に警戒が必要です(富山県HPより)。

ブナミズナラコナラ
不作不作並作

中部森林管理局

 中部森林管理局では、長野県内の国有林52箇所において、堅果類(ブナ・ミズナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:7月末~8月)。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

富山地域

ブナミズナラ
並作下凶作

新川地域

ブナミズナラ
並作下不作

石川県

石川県

 石川県では8月中旬から9月上旬に、「着果状況調査」から推定した堅果類(ブナ:20地点・ミズナラ22地点・コナラ30地点)の豊凶調査が実施されています。

 ブナの豊凶調査を実施した結果、4月・6月の調査に引き続き「凶作」であることが予想されているため、令和4年9月12日にツキノワグマ出没警戒情報が発令されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラ
凶作

福井県

福井県

 福井県ではツキノワグマの大量出没を予測するために、平成17年度より秋期の主要作物である堅果類の豊凶調査が実施されています。

 令和4年度はブナが不作、ミズナラ・コナラは並作と報告されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

ブナミズナラコナラ
不作並作並作

長野県

長野県

 長野県では、秋の餌の状況により人里周辺への出没が増加する場合があることから、主な餌となるブナ、ミズナラ、コナラ等の堅果類の豊凶調査が実施されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラクリ
クヌギ
大凶作〜豊作大凶作〜大豊作大凶作〜大豊作大凶作〜大豊作

中部森林管理局

 中部森林管理局では、長野県内の国有林233箇所において、堅果類(ブナ・ミズナラ・コナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:8月中旬~9月上旬)。

 令和4年度はブナは並作(地域により豊作~不作)、ミズナラは不作(地域より並作上~不作)、コナラは不作(地域により並作上~不作)と報告されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラ
並作不作不作

岐阜県

岐阜県

 岐阜県では、秋季のクマの主な餌であるブナ・ミズナラ・コナラの堅果類の豊凶がクマの出没に影響を与えることから、県内5圏域、25地点の指標木(1地点あたり10本)の調査が実施されています。

 令和4年度はブナ、ミズナラ、コナラのすべての調査樹種において凶作であると報告されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラ
凶作凶作凶作

愛知県

愛知県

 愛知県では、毎年度ドングリの実りの状況等をもとに専門家の助言を受け、県内に生息するツキノワグマの出没予測が行われています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ミズナラコナラ
並作並作

中部森林管理署

 中部森林管理局では、愛知県内の国有林17箇所において、堅果類(ミズナラ・コナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:8月末から9月上旬)。

 

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ミズナラコナラ
凶作凶作〜並作下

関西

京都府

京都府

 京都府ではコナラ・ミズナラ・ブナ・イヌブナの調査が実施されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

コナラミズナラブナイヌブナ
凶作並作 凶作凶作

中国

鳥取県

鳥取県(鳥取大学へ委託)

 鳥取県では、秋期のツキノワグマの出没の参考とするため、平成23年度からブナ・ミズナラ・コナラ・クリの豊凶調査が実施されています。

 2022年 未発表

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラクリ

島根県

中山間地域研究センター

 島根県では、秋期のツキノワグマの出没予測の参考にするため、平成26年度から堅果類等の豊凶調査が実施されています。

コナラシバグリブナミズナラ
並作 豊作凶作豊作
アラカシシラカシスダジイクマノミズキ
豊作 豊作豊作凶作

岡山県

岡山県

 岡山県では、ツキノワグマの出没予測に役立てるため、津山地域・勝央地域で9月上旬〜中旬にブナ(3地点)・ミズナラ(6地点)・コナラ(26地点)で豊凶調査が実施されています。

ブナミズナラコナラ