秋期の堅果類(ドングリ類)などはツキノワグマの重要な餌資源となっており、実なりの状況(豊凶状況)に大きな影響を受けます。特に、実なりの悪い年(凶作年)には人里付近へ出没する可能性が高まると考えられています。そのため、各地域では堅果類等の豊凶調査が実施され、秋期の人里への出没が予測されています。本ページでは全国で実施されている堅果類等の豊凶調査についてまとめました。
堅果類等の豊凶調査とは
秋期の堅果類(ドングリ類)などはツキノワグマの重要な餌資源となっており、実なりの状況(豊凶状況)に大きな影響を受けます。特に、実なりの悪い年(凶作年)には人里付近へ出没する可能性が高まると考えられています。そのため、各地域では堅果類等の豊凶調査が実施され、秋期の人里への出没が予測されています。
主要な堅果類
コナラ
クリ
ミズナラ
北海道
北海道
北海道
北海道では、秋のヒグマの主要食物のミズナラ(299地点)・ブナ(24地点)・ヤマブドウ・サルナシ(226地点)の実なり状況について、関係機関等とともに平成17年度から実施されています。
今年はミズナラ・ブナが不作、ヤマブドウ・サルナシが不作〜並作であると予想されています。
豊凶区分
- 凶作
- 不作
- 並作
- 豊作
ミズナラ | ブナ | ヤマブドウ | サルナシ |
---|---|---|---|
不作 | 不作 | 並作〜不作 | 並作〜不作 |
東北
青森県
東北森林管理局
東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。
今年は38地点でブナの開花状況の調査が行われ、並作であると予想されています。また、種子の豊凶調査では、凶作であると予想されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
ブナ(開花状況) | ブナ(結実状況) |
---|---|
並作 | 凶作 |
岩手県
東北森林管理局
東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶状況調査を実施しています。
今年は23地点でブナの開花状況の調査が行われ、凶作であると予想されています。また、種子の豊凶調査では、大凶作であると予想されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
ブナ(開花状況) | ブナ(結実状況) |
---|---|
凶作 | 大凶作 |
宮城県
東北森林管理局
東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶状況調査を実施しています。
今年は6地点でブナの開花状況の調査が行われ、豊作であると予想されています。また、種子の豊凶調査では、凶作であると予想されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
ブナ(開花状況) | ブナ(結実状況) |
---|---|
豊作 | 凶作 |
秋田県
秋田県
豊凶区分
- 凶作
- 並作
- 豊作
調査地点 | ブナ |
---|---|
八森 | 凶作 |
森吉山 | 凶作 |
田沢湖 | 凶作 |
東成瀬 | 凶作 |
鳥海 | 凶作 |
東北森林管理局
東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。
今年は54地点でブナの開花状況の調査が行われ、凶作であると予想されています。また、種子の豊凶調査では、大凶作であると予想されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
ブナ(開花状況) | ブナ(結実状況) |
---|---|
凶作 | 大凶作 |
山形県
山形県
山形県の森林面積(約15万ha)の約22%を占める天然のブナ林は、秋期の野生動物の食料として大きな役割を果たしています。山形県では、森林の生態系の変化や野生動物の生息の影響を把握するためにブナの豊凶調査が実施されています。
今年の結果(ブナ)は、豊作1か所、並作5か所、凶作9か所と、全体的に凶作が多いと予測されています。
豊凶区分
- 凶作
- 並作
- 豊作
調査地点 | ブナ |
---|---|
湯の台 | 凶作 |
羽黒山 | 並作 |
関川 | 並作 |
沼の台 | 凶作 |
西小俣 | 並作 |
与蔵峠 | 凶作 |
鍋越峠 | 並作 |
弓張平 | 凶作 |
入田沢 | 並作 |
月山自然植物園 | 豊作 |
花立峠 | 凶作 |
黒伏 | 凶作 |
蔵王(鳥兜) | 凶作 |
駒立 | 凶作 |
徳網 | 凶作 |
東北森林管理局
東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。
今年は21地点でブナの開花状況の調査が行われ、凶作であると予想されています。また、種子の豊凶調査では、凶作であると予想されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
ブナ(開花状況) | ブナ(結実状況) |
---|---|
凶作 | 凶作 |
福島県
福島県
福島県では、会津地方・中通り地方でブナ・ミズナラ・コナラの調査が実施されています。
今年は全県的にコナラは凶作、ブナ・ミズナラは並作となり、昨年度と比較すると、堅果類(ブナ、ミズナラ、コナラ)の結実状況が多少良くなったことから、晩秋にかけて人里への出没が少なくなることが予想されています(福島県HP)。
豊凶区分
- 凶作
- 不作
- 並作
- 豊作
ブナ | ミズナラ | コナラ |
---|---|---|
並作 | 並作 | 凶作 |
関東
栃木県
栃木県
栃木県では、8月〜9月に高原・県北・県南・奥日光地域でミズナラ・コナラの豊凶調査が実施されています。
高原地域
ミズナラ | コナラ |
---|---|
並作 | 不作 |
県北地域
ミズナラ | コナラ |
---|---|
不作 | 凶作 |
県南地域
ミズナラ | コナラ |
---|---|
凶作 | 並作 |
奥日光地域
ミズナラ |
---|
凶作 |
群馬県
群馬県
群馬県では、9月上旬から中旬に利根沼田地域でブナ・ミズナラ・コナラ・クリ・ミズキの調査が実施されています。
今年の豊凶調査の結果は、5樹種合計で『並作』であり、大量出没のあった年と比較すると全体的に堅果類の量は多いものの、ブナ、ミズナラ、クリは不作と予想されています(群馬県HP)。
凶作であった昨年度と比べると大量出没する可能性は低いと予測されていますが、2年間が不作と凶作であったことから、予測に反して出没が増えることも考えられています(群馬県HP)。
ブナ | ミズナラ | コナラ | クリ | ミズキ |
---|---|---|---|---|
不作 | 不作 | 並作 | 不作 | 豊作 |
神奈川県
神奈川県
丹沢山地では、今年の豊凶調査の結果は堅果類(ブナ、ミズナラ、コナラ等)の実りが例年より悪くなると予想されており、クマの出没が増加する恐れがあると考えられています(神奈川県HP)。
ブナ | ミズナラ | コナラ |
---|---|---|
凶作 | 凶作 | 並作 |
中部
新潟県
新潟県
新潟県では、7月1日〜8月31日に、全県356地点(佐渡市・栗島浦村を除く)でブナ・ミズナラ・コナラ・クリ・オニグルミの調査が実施されています。
主に奥山に分布している、ブナ、ミズナラが凶作~不作、ブナよりも人里付近に多く分布しているコナラ・クリ・オニグルミは不作〜並作と予想されています(新潟県HP)。そのため、奥山でエサが不足し、人里付近の里山(カキ等も含む)にも出没する可能性が高いと予想されています(新潟県HP)。
豊凶区分
- 凶作
- 不作
- 並作
- 豊作
ブナ | ミズナラ | コナラ | クリ | オニグルミ |
---|---|---|---|---|
凶作~不作 | 凶作~不作 | 不作~並作 | 不作~並作 | 不作~並作 |
富山県
富山県
富山県では、全県でブナ(15地点)・ミズナラ(16地点)・コナラ(10地点)の豊凶調査が実施されています。
大量出没と関係が深いブナとミズナラは2種とも凶作となった過去の大量出没年より作柄が良く、里山に生育するコナラは不作で例年並みと予想されています。そのため、今年の秋はクマが平野部へ大量出没する可能性は低いと考えられています。
ブナ | ミズナラ | コナラ |
---|---|---|
並作 | 不作 | 不作 |
石川県
石川県
石川県では8月中旬から9月上旬に、「着果状況調査」から推定した堅果類(ブナ:20地点・ミズナラ22地点・コナラ30地点)の豊凶調査が実施されています。今年の豊凶調査の結果はブナが大豊作、ミズナラが豊作、コナラは並作と予想されています(石川県HP)。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
- 大豊作
ブナ | ミズナラ | コナラ |
---|---|---|
大豊作 | 豊作 | 並作 |
福井県
福井県
福井県ではツキノワグマの大量出没を予測するために、平成17年度より秋期の主要作物である堅果類の豊凶調査が実施されています。
長野県
長野県
長野県では、秋の餌の状況により人里周辺への出没が増加する場合があることから、主な餌となるブナ、ミズナラ、コナラ等の堅果類の豊凶調査が実施されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作下
- 並作
- 並作上
- 豊作
- 大豊作
ブナ | ミズナラ | コナラ | クリ クヌギ |
---|---|---|---|
大凶作 〜 並作 | 大凶作 〜 豊作 | 大凶作 〜 大豊作 | 凶作 〜 大豊作 |
中部森林管理局
中部森林管理局では、長野県内の国有林215箇所において、堅果類(ブナ・ミズナラ・コナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:8月中旬~9月上旬)。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作下
- 並作
- 並作上
- 豊作
- 大豊作
ブナ | ミズナラ | コナラ |
---|---|---|
並作下 | 不作 | 不作 |
岐阜県
岐阜県
岐阜県では、秋季のクマの主な餌であるブナ・ミズナラ・コナラの堅果類の豊凶がクマの出没に影響を与えることから、県内5圏域、25地点の指標木(1地点あたり10本)の調査が実施されています。今年の豊凶調査の結果は、ブナが並作・ミズナラが並作・コナラが並作と推定されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
- 大豊作
ブナ | ミズナラ | コナラ |
---|---|---|
並作 | 並作 | 並作 |
愛知県
愛知県
愛知県では、毎年度ドングリの実りの状況等をもとに専門家の助言を受け、県内に生息するツキノワグマの出没予測が行われています。今年の豊凶調査の結果は、ミズナラが並作・コナラが凶作と推定されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
- 大豊作
ミズナラ | コナラ |
---|---|
並作 | 凶作 |
中部森林管理署
中部森林管理局では、愛知県内の国有林17箇所において、堅果類(ミズナラ・コナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:8月末から9月上旬)。今年の豊凶調査の結果は、ミズナラが凶作・コナラが不作と推定されています。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作
- 豊作
- 大豊作
ミズナラ | コナラ |
---|---|
凶作 | 不作 |
関西
京都府
京都府
京都府ではコナラ・ミズナラ・ブナ・イヌブナの調査が実施されています。今年の豊凶調査の結果は、コナラが並作・ミズナラが並作・ブナが豊作・イヌブナが凶作と推定されています。
豊凶区分
- 凶作
- 並作
- 豊作
コナラ | ミズナラ | ブナ | イヌブナ |
---|---|---|---|
並作 | 並作 | 豊作 | 凶作 |
中国
鳥取県
鳥取県(鳥取大学へ委託)
鳥取県では、秋期のツキノワグマの出没の参考とするため、平成23年度からブナ・ミズナラ・コナラ・クリの豊凶調査が実施されています。今年の結果はブナが大豊作・ミズナラが並作上・コナラが並作上・クリが並作上と予測されています(中間報告)。
豊凶区分
- 大凶作
- 凶作
- 並作下
- 並作上
- 豊作
- 大豊作
ブナ | ミズナラ | コナラ | クリ |
---|---|---|---|
大豊作 | 並作上 | 並作上 | 並作上 |
島根県
中山間地域研究センター
島根県では、秋期のツキノワグマの出没予測の参考にするため、平成26年度から堅果類等の豊凶調査が実施されています。今年の結果は、東部地域ではコナラが豊作・シバグリが豊作・ブナが豊作・ミズナラが凶作・クマノミズキが豊作と予想されています。また、西部地域ではコナラが豊作・シバグリが豊作・ブナは凶作・ミズナラが凶作・クマノミズキが豊作と予想されています。
東部地域
コナラ | シバグリ | ブナ | ミズナラ | クマノミズキ |
---|---|---|---|---|
豊作 | 豊作 | 豊作 | 凶作 | 豊作 |
西部地域
コナラ | シバグリ | ブナ | ミズナラ | クマノミズキ |
---|---|---|---|---|
豊作 | 豊作 | 凶作 | 凶作 | 豊作 |
岡山県
岡山県
岡山県では、ツキノワグマの出没予測に役立てるため、津山地域・勝央地域で9月上旬〜中旬にブナ(3地点)・ミズナラ(6地点)・コナラ(26地点)で豊凶調査が実施されています。
ブナ | ミズナラ | コナラ |
---|---|---|
並作 | 並作 | 並作 |