人間の生活圏でもよく見かけるカラスですが、案外身近な場所で繁殖(営巣)している事はご存知でしょうか。カラスは様々な環境に適応し、人間が作り出した環境下で生活しています。本記事ではカラスの営巣環境や営巣木・巣材等について紹介します。
記事の内容
・巣の特徴
・巣材には何を使うのか?
・どんな木に営巣するのか?
留鳥のカラス
日本には主に10種類のカラス類が生息・飛来しますが、主にハシブトガラス・ハシボソガラスの2種類が生息しています(斎藤,2017)。
ハシボソガラス
ハシボソガラス(Corvus corone)は留鳥として九州以北(沖縄ではまれな冬鳥)に分布し、農耕地や市街地・河原・海岸などに生息します。雑食性で主に果実や昆虫類などを採食します。鳴き声は『ガァガァ』と濁った声で鳴きます。
ハシブトガラス
ハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)は留鳥または漂鳥として小笠原諸島を除く全国に分布し、市街地・農耕地・林・海岸・高山帯(夏季)など様々な環境に生息します。雑食性で、動物の屍体から人間の残飯など幅広い食物を採食します。
『カァカァ』と澄んだ声で鳴きますが、濁った声も出すことがあります。秋から冬にかけては数百羽から数千羽の大群となり、集団ねぐらを作ります。
カラスの営巣木・巣材
カラスの巣の特徴
カラスの巣は主に木の枝で作られており、すり鉢状の構造になっています。また、ハンガーやブルーシート・ナイロンロープ等の人工物も巣材に利用します。
巣材(木の枝)
巣材(木の枝・ハンガー)
巣材(木の枝・ブルーシート・ナイロンロープ)
営巣木
カラスは環境適応力が高く、公園・街路樹・民家や施設等の植栽木・社寺林・河畔林・里山林・人工物など、さまざまな環境に営巣します。
営巣木にはイチョウ・カキ・ケヤキ・コナラ・サクラ・クロガネモチ・スギ・ナンキンハゼ等を利用します。また、民家のアンテナや橋梁・電柱などの人工物も営巣木に利用することがあります。
イチョウ(社寺林)
電柱
カラスは電柱などに営巣を行いますが、営巣による停電事故が発生しています。電力会社では停電事故防止のため、作業員による巡視や地域住民による営巣の情報提供のお願いがHP等に掲載されています(四国電力・九州電力送配電・北陸電力)。
参考文献
- 北陸電力株式会社.電柱の上にカラスの巣を見つけたらご連絡ください.(https://www.rikuden.co.jp/nw_hokurikuqa/karasu.html).
- 九州電力送配電株式会社.鳥の巣やカズラの巻き付きなどを発見されたらご連絡ください.(https://www.kyuden.co.jp/td_supply_accident-prevention_hakken.html).
- 斎藤 博(2017).フィールド図鑑 日本の野鳥 第2版.株式会社 文一総合出版.
- 四国電力株式会社.電柱に鳥の巣を見つけたら.(https://www.yonden.co.jp/nw/contact_case/birds_nest/index.html)