ニホンジカ (Cervus nippon)は偶蹄目シカ科の哺乳類で,日本・中国・ロシアに分布しています。日本国内では北海道・本州・四国・九州・南西諸島に生息しており,エゾジカ・ホンシュウジカ・キュウシュウジカ・マゲジカ・ヤクシカ・ケラマジカ・ツシマジカの7亜種に分類されています。
特徴
ニホンジカ (Cervus nippon)は偶蹄目シカ科の哺乳類で,日本・中国・ロシアに分布しています。日本国内では北海道・本州・四国・九州・南西諸島に生息しており,エゾジカ・ホンシュウジカ・キュウシュウジカ・マゲジカ・ヤクシカ・ケラマジカ・ツシマジカの7亜種に分類されています(大泰司,1986)。北に生息するニホンジカの方が大きく,成獣オスの標準体重は,エゾジカ約120kg,ホンシュウジカ約60〜100kg,キュウシュウジカ約50kg,ヤクシカ約35kg,ケラマジカ約30kgです(大泰司,1986)。
繁殖生態
ニホンジカは10〜11月に繁殖期を迎え,5〜6月に出産します。妊娠期間は240日前後で,基本的に1頭の子を出産しますが、稀に2頭出産することもあります。1歳で15%、2歳以上で80%以上が妊娠するなど、高い繁殖能力を持っています。
繁殖期 | 10〜11月 |
出産時期 | 5〜6月 |
妊娠期間 | 240日前後 |
一腹産子数 | 1頭 ※稀に2頭 |
妊娠率 | 1歳 15.6% 2歳 88.1% 3歳以上 92.9% (松金&横山,2018) |
食性
採食植物
シカは草食動物であり,多くの種類の植物を採食します。リョウブやナナカマド,ミズナラ,アオキ,タラノキ,ノリウツギ,アオダモ,スズダケ,ガマズミ,スギ,ヒノキなどを好みます。
不嗜好性植物
一方,シカが全く採食しない,または他の植物よりも相対的に採食されない植物(不嗜好植物)もあります。不嗜好植物には,アセビ・アブラギリ・イヌガシ・イワヒメワラビ・ナンキンハゼ・シキミ・コシダ・ジャケツイバラ・ダンドボロギクなどがあります。
行動圏
最外殻法(MCP)
ホンシュウジカ
オス | メス | 地域・論文 |
---|---|---|
0.209㎢ (N=4) | 0.695㎢ (N=2) | 弥山山地(島根県) (横山ほか,2002) |
2.113±1.5241㎢ (N=3) | 0.76±0.277㎢ (N=6) | 大台ヶ原 (前地ほか,2000) |
キュウシュウジカ
オス | メス | 地域・論文 |
---|---|---|
2.01㎢ | 0.336㎢ | 大藪川流域 (矢部ほか,2001) |
最外殻(MCP)法のイメージ図
引用文献
- 大泰司紀之. (1986). 二ホンジカにおける分類· 分布· 地理的変異の概要. 哺乳類科学, 26(2), 2_13-17.
- 南野一博, 福地稔, & 明石信廣. (2007). 多雪地におけるエゾシカの越冬期の食性と生息地選択.
- 前地育代, 黒崎敏文, & 横山昌太郎. (2000). 大台ケ原におけるニホンジカの行動圏.
- 松金(辻)知香, & 横山真弓. (2018). 兵庫県における高密度下でのニホンジカの繁殖特性. 哺乳類科学, 58(1), 13-21.
- 矢部恒晶, 小泉透, 遠藤晃, 関伸一, & 三浦由洋. (2001). 九州中央山地におけるニホンジカのホームレンジ. 日林九支研論, 54, 131-132.
- 横山典子, 片桐成夫, & 金森弘樹. (2002). 島根半島・弥山山地におけるニホンジカ (Cervus nippon) の行動圏と樹種構成との関係. 森林応用研究, 11(2), 27-38.