野鳥

アオサギ(Ardea cinerae)の生態|食性・繁殖期・コロニー・一腹産卵数

 アオサギは北海道から九州まで広く分布し、浅い水辺や水田・草地などを採餌場として魚類を中心に両生類や甲殻類・昆虫類・哺乳類(ネズミ等)を採食します。アオサギは2〜9月に高木の針葉樹や広葉樹の樹上に営巣し、20〜100羽ほどの集団繁殖地(コロニー)を作って繁殖します。

特徴

 アオサギ(Ardea cinerae)は、ユーラシアからアフリカ大陸の温帯から熱帯まで広く分布し、日本では北海道から九州まで広く分布しています。全長は90cm程で、翼の上面はうすく黒味のある灰色で、翼の風切羽は濃い青色。日本で繁殖するサギの仲間としては最大です。

アオサギの繁殖生態

繁殖生態(コロニー)・繁殖期

 アオサギは基本的に高木の針葉樹や広葉樹の樹上に営巣しますが、ヨシ原での地上営巣や農業用ため池の人工浮遊物への営巣例も確認されています(河口,2008・小林, 2000)。20〜100羽ほどの集団繁殖地(コロニー)を形成し、ゴイサギやコサギ・チュウサギ・アマサギ・カワウとの混合コロニーを形成することもあります(栄村ほか, 2005・日本野鳥の会福井県支部サギ類調査グループ, 2009)。

 三重県尾鷲市佐波瑠島では、700〜800羽程のコロニーを形成する事例も報告されています(倉田 & 樋口, 1972)。

 アオサギの繁殖期は2~9月上旬で、巣作りは2月下旬〜5月上旬、巣立ちは5月中旬から9月下旬に迎えます。繁殖期は地域によって異なりますが、温暖な地域では早く、寒冷地では遅くなる傾向があります。

巣作りから巣立ちまでの期間

多摩川中流域(白井, 1999)

産卵数・巣立ち数

 三重県尾鷲市佐波瑠島では2月下旬から3月上旬に産卵期を迎え、一腹産卵数は2〜5卵(平均3.8卵)で、初卵が産下された日から抱卵が開始されます(倉田 & 樋口, 1972)。多摩川中流域では、一つの巣から巣立つ雛数は平均3.10羽であると報告されています(白井, 1999)。

育雛期の生態・行動圏

 繁殖期の行動圏はコロニーから5~10kmで、雛の成長が進むにつれて増加する傾向があります(倉田 & 樋口, 1972)。繁殖期コロニーのアオサギの吐き戻し調査では、親鳥は魚類・甲殻類・両生類・昆虫類を雛鳥に与えており、魚類が圧倒的に高い割合だったと報告されています(佐原ほか, 1994)。

食性

 アオサギは魚類を中心に,両生類や甲殻類・昆虫類・哺乳類(ネズミ等)を採食します。アオサギは淡水・海水の浅い水田や草地などを採餌場として利用し、ゆっくりと歩いたり、じっと待ち伏せするなどしてえさを捕食します。推定体長30cm程のニゴイやカワヤツメなどを採食した記録も報告されています。

サギ類による被害

農作物被害

 サギ類による農作物被害のほとんどはイネ被害です。カエルやドジョウなどのえさを採食するために水田に入り、田植え後のイネを踏み荒らす踏害が発生します。

引用文献

  • 濱尾章二, 秋葉亮, & 棗田孝晴. (2013). 採食環境が競合するアオサギとダイサギにおける餌生物および獲得食物量の比較. Bird Research9, A23-A29.
  • 片山直樹, 村山恒也, & 益子美由希. (2015). 水田の有機農法がサギ類の採食効率および個体数に与える影響. 日本鳥学会誌64(2), 183-193.
  • 川口敏. (2008). 人工浮遊物に営巣したアオサギ. 香川生物35, 9-10.
  • 小林繁樹. (2000). 山口県平生町で記録したサギ類3種の地上営巣例. Strix: 日本野鳥の会研究報告, (18), 121-1126.
  • 倉田篤 & 樋口行雄. (1972). 三重県佐波留島におけるアオサギの繁殖について. 鳥, 21(91-92), 308-315.
  • 栗山武夫, 沼田寛生. (2020). 特集「兵庫県における外来哺乳類の現状と課題」第3章 兵庫県神戸市におけるニホンアカガエル繁殖期に出没・カエルを捕食したアライグマの記録. 兵庫ワイルドライフモノグラフ 12: 35-48.
  • 日本野鳥の会福井県支部サギ類調査グループ. (2009). 福井県におけるサギ類コロニーの分布と種構成 -2009年サギ類コロニー調査の結果-. 福井県自然保護センター研究報告, 14:11-20.
  • 栄村奈緒子, 畑邦彦 & 曽根晃一. (2005). 鹿児島県垂水市周辺におけるサギ類のコロニーや塒の利用と採食場所選択.鹿児島大学農学部演習林研究報告. 33: 29-34.
  • 佐原雄二, 作山宗樹 & 出町玄. (1994). 繁殖期におけるアオサギ Ardea cinerea のエサと採餌場利用. 日鳥学誌43, 61-71.
  • 桜谷保之. (2001). 近畿大学奈良キャンパスにおける野鳥類の食性. 近畿大学農学部紀要, (34), 151-164.
  • 白井剛. (1999). 多摩川中流域におけるアオサギの繁殖生態. Strix, 17, 85-91.