野鳥

SNS(Facebook・Twitter)・野鳥観察ブログなどを用いたコブハクチョウの分布調査

 コブハクチョウ(Cygnus olor)はカモ目カモ科ハクチョウ属に分類される野鳥で、ヨーロッパ中西部・中央アジア・モンゴル・バイカル湖東部・ウスリー川流域などに分布しています。日本にはまれな迷鳥として記録例がありますが、多くは観賞用などの目的で移入されたものがかご抜けし、一部の個体が野生化しています。日本で生息しているコブハクチョウの生息情報は断片的にしか記録されていないことも多いため、SNS等を用いて分布情報をまとめました。

コブハクチョウについて

 コブハクチョウ(Cygnus olor)はカモ目カモ科ハクチョウ属に分類される野鳥で、ヨーロッパ中西部・中央アジア・モンゴル・バイカル湖東部・ウスリー川流域などに分布しています。日本にはまれな迷鳥として記録例がありますが、多くは観賞用などの目的で移入されたものがかご抜けし、一部の個体が野生化しています。

 千葉県柏市と我孫子市などにまたがる手賀沼では、沼に生息するコブハクチョウが稲の苗を食害するなど、農業被害の発生が問題になっています(朝日新聞)。

コブハクチョウの見分け方

 コブハクチョウは額付近の黒いコブ、オレンジ色のくちばしが特徴的です(オオハクチョウ・コブハクチョウのくちばしは黄色)。雌雄同色で成長は白色、幼鳥は灰褐色です。

コブハクチョウの分布情報

 日本で生息しているコブハクチョウの生息情報は断片的にしか記録されていないことも多いため、SNS等で写真がアップロードされている情報を基に分布情報をまとめました。生息情報(放鳥情報)の収集には、SNS(Facebook・Twitter・Youtube)や個人の野鳥観察ブログ・新聞記事・自治体HP・会社等HPを使用しました。詳細に目撃場所が記載してある場合はその位置を、湖沼や池の名前のみが記載してある場合は、国土地理院地図で名称が記載されているポイントを記録しています。

情報収集方法
  • SNS(Facebook、Twitter・Youtube)
  • 野鳥観察ブログ
  • 新聞記事
  • 自治体HP
  • 会社等HP

  • 種類同定のミスを防ぐため、写真で確認できた情報を記録
  • SNSは都市部の情報が非常に多いため、実際の生息状況よりも都市部に生息情報が偏る傾向があります。
  • 野外で飼育(飛べないように風切り羽を切るなどの管理)されている個体を含んでいる可能性があります。

目撃情報の地図

全国

北海道

 北海道ではクッチャロ湖・洞爺湖・ウトナイ湖の周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。北海道ではコブハクチョウは国外外来種としてブルーリスト(北海道の外来種リスト)に掲載されており、導入された経緯や生態学的特性・生態系や農林水産等に与える影響について取りまとめられています。

 北海道では1975年に七飯町大沼国定公園に観賞用のためつがいが導入され、翌年には8羽のひなが生まれ、1977年頃にはウトナイ湖に定着しました(北海道ブルーリスト2010)。

東北

 東北地方では、青森県の小川原湖・六ヶ所村・弘前城、宮城県の仙台空港周辺・加瀬沼、福島県の松川浦周辺、秋田県の米代川周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。

関東

 関東地方では多くのコブハクチョウの情報が投稿されており、特に茨城県で多くの情報が投稿されています。茨城県では、手賀沼・印旛沼・北浦・霞ヶ浦・涸沼・名平洞周辺、東京都では皇居のお堀、葛西臨海公園・荒川自然公園・馬事公苑、神奈川県では多摩川・相模川・酒匂川周辺、埼玉県では智光山公園、群馬県では大沼・城沼・多々良沼周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。

甲信越

 甲信越では、山梨県の山中湖・河口湖・精進湖・南伊那ヶ湖、長野県では諏訪湖・松本城のお堀、新潟県の阿賀野川・瓢湖周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。

東海・北陸

 東海地方では静岡県の清水港周辺、愛知県の岡崎市周辺・名古屋城のお堀、三重県の四日市周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。愛知県では、『自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例』において、生態系に著しく悪影響を及ぼすおそれのある移入種を公表し、みだりに野外に放つ行為が規制されています。

 北陸地方では、石川県の邑知潟・穴水周辺、福井県の古城公園のお堀でコブハクチョウの情報が投稿されています。

関西

 関西地方では、滋賀県の琵琶湖周辺、彦根城のお堀、京都府の長岡天満宮、奈良県の平城京水上池、大阪府の万博公園、兵庫県の昆陽池・加東市周辺、和歌山県の和歌山城のお堀でコブハクチョウの情報が投稿されています。

中国

 岡山県では玉野市・倉敷市美観地区周辺、広島県では福山市・三次市周辺、島根県では宍道湖・神西湖・稲佐の浜周辺、山口県では橋下川・長門市・下関市周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。

四国

 香川県では香東川周辺、徳島県では吉野川周辺、高知県では穴喰川周辺、愛媛県では城山公園のお堀・新浜市周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。

九州

 福岡県では遠賀川・津屋崎・海の中海浜公園・今津干潟・長野川周辺、佐賀県では松浦川・伊万里市周辺、長崎県では雪浦川周辺、大分県では志高湖、鹿児島県では藺牟田池周辺でコブハクチョウの情報が投稿されています。

参考文献

  • 大久保泰 「かわいい」と餌やり 外来種のコブハクチョウが苗を...』 朝日新聞(2021年6月1日)

日本で観察されたコブハクチョウの個体数の推移|ガンカモ類の生息調査  コブハクチョウ(Cygnus olor)はカモ目カモ科ハクチョウ属に分類される野鳥で、日本にはまれな迷鳥として記録例がありますが、多...