野生動物

コブハクチョウの生態|特徴・食性・繁殖生態

 コブハクチョウ(Cygnus olor)はカモ目カモ科ハクチョウ属に分類される野鳥で、日本にはまれな迷鳥として記録例がありますが、多くは観賞用などの目的で移入されたものがかご抜けし、一部の個体が野生化しています。

特徴

 コブハクチョウ(Cygnus olor)はカモ目カモ科ハクチョウ属に分類される野鳥で、ヨーロッパ中西部・中央アジア・モンゴル・バイカル湖東部・ウスリー川流域などに分布しています。日本にはまれな迷鳥として記録例がありますが、多くは観賞用などの目的で移入されたものがかご抜けし、一部の個体が野生化しています。

 コブハクチョウは額付近の黒いコブ、オレンジ色のくちばしが特徴的です(オオハクチョウ・コハクチョウのくちばしは黄色)。雌雄同色で成長は白色、幼鳥は灰褐色です。

食性

 コブハクチョウは水辺周辺に自生しているシャジグモ類(淡水性の緑藻)や多年生の草本を採食します(Holm, 2002)。一方、千葉県の手賀沼周辺ではイネの苗を食害するなど,農業被害が発生している地域もあります(『東京新聞』2022.6.13. Web版)。

繁殖生態

繁殖期

 コブハクチョウは主に2歳でつがいを形成し、平均3〜4歳(2〜9歳)から繁殖を行います(Minton, 1968., Smiddy & O’Halloran,1991)。

 ヨーロッパに生息しているコブハクチョウは3月下旬〜5月上旬に産卵することが観察されています(Reynolds, 1972)。日本(飼育個体)では2月中旬〜5月上旬に産卵が観察されており、4月中旬〜6月上旬に孵化していることが観察されています。

営巣場所

 コブハクチョウは河川や湖の小島や浅瀬に生育している水生植物を用いて、塚のような巣をつくります。巣は複数年利用することもあり、必要に応じて復元または再構築します。

 初めて営巣するメスは、以前に使用していた巣を使用したメスよりも初卵日が遅くなるため、一腹産卵数が減少する傾向があります(Reynolds, 1972)。

一腹産卵数・巣立ち数(連れ子数)

 ヨーロッパ(イギリス・オランダ・ポーランド)に生息しているコブハクチョウの一腹産卵数は1〜11卵(中央値:5.30〜6.90卵)、巣立ち数は1〜9卵(中央値:3.00〜4.42卵)と報告されています。

 日本に生息するコブハクチョウにおいては、飼育個体で6〜10羽(平均7.6羽)、野生化個体で2〜9羽(平均6.0羽)の子を連れていることが観察されています。特に山梨県や茨城県で多くの繁殖個体が観察がされています。

引用文献

  • Beekman, J. H. (2013). Laying date and clutch size in relation to body weight in the Mute Swan Cygnus olor. Wildfowl, 279-287.
  • Czapulak, A., & Wieloch, M. (2013). The breeding ecology of the Mute Swan Cygnus olor in Poland-preliminary report. Wildfowl, 161-166.
  • Minton, C. D. T. (1968). Pairing and breeding of Mute Swans. Wildfowl19(19), 41-60.
  • Perrins, C. M., & Reynolds, C. M. (1967). A preliminary study of the Mute Swan, Cygnus olor. Wildfowl18(18), 74-84.
  • Reynolds, C. M. (1972). Mute Swan weights in relation to breeding. Wildfowl23(23), 111-118.
  • Smiddy, P., & O’Halloran, J. (1991). The breeding biology of Mute Swans Cygnus olor in southeast Cork, Ireland. Wildfowl42(42), 12-16.
  • Wlodarczyk, R., & Wojciechowski, Z. (2001). The breeding ecology of the Mute Swan Cygnus olor in central Poland. Wildfowl52(52), 157-168.
  • 外来種・コブハクチョウの食害広がる 手賀沼周辺の水田、被害1.5倍に 保護求める声もあり対応に苦慮.東京新聞.2022-06-13,東京新聞Web, https://www.asahi.com/articles/ASN7Z3JTJN7ZUQIP00D.html?iref=sp_tectop_feature5_list_n ,(参照2022-06-15)

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