ヌートリア（Myocastor coypus）はネズミ目 ヌートリア科 ヌートリア属の大型齧歯類の動物です。南アメリカ原産で、日本には毛皮の原料とするために導入されました。繁殖力が高く、農業や生態系等に甚大な被害を与えるため、特定外来生物に指定されています。日本では西日本を中心に生息しており、分布は拡大傾向にあります。
まとめ
- ヌートリアは中部以西に分布
- SNS等の情報は都市部に集中しており、生息状況よりも都市部に偏る傾向
- 日中の人口の多い都市中心部でも多数の目撃あり
- ヌートリアはカワウソやビーバー・マスクラットと間違えて投稿されている場合あり
特徴
ヌートリア（Myocastor coypus）はネズミ目 ヌートリア科 ヌートリア属の大型齧歯類の動物です。ヌートリアの体毛は濃いグレーで、暗褐色から黄褐色の長く光沢のあるガードヘア（刺し毛）で覆われています。また、特徴的な黄・赤褐色の大きな切歯があります。後足の第1〜4指の間には、よく発達した水掻きがあります。
分布・移入経緯
ヌートリアは南アメリカ大陸、赤道南部の温帯地帯が本来の生息地でしたが、毛皮養殖のために北米やヨーロッパ・ロシア・中東・アフリカ・日本などで導入され、各地で逃げ出したり放出されたりして、野生化しました（LeBlanc,D.J., 1994）。
日本でも、第二次世界大戦の頃に軍服用の毛皮を生産する目的で移入され（朝日，1980）、軍用毛皮獣養殖所が設置され、4万頭もの個体が飼育されていた。戦後には食用獣・毛皮獣ともなる家畜が必要とされるなか、ヌートリアは繁殖力が高く、死亡率が少なく、大人しく飼育しやすい有用獣として扱われていました（三浦，2003）。
ヌートリアの分布情報
日本で生息しているヌートリアの生息情報は、平成27～29年度に生物多様性センター（環境省 自然環境局）が『要注意鳥獣（クマ等）生息分布調査』で実施しています。調査では、中国地方を中心とした18府県から、全国（計19,255メッシュ）の約８％にあたる1,544メッシュで生息分布情報が得られています。
SNSではヌートリアの写真が多数アップロードされているため、SNS等の情報を基に分布情報をまとめました。生息情報の収集には、SNS（Facebook・Twitter・Youtube）や個人の野鳥観察ブログ・新聞記事・自治体HP・会社等HPを使用しました。詳細に目撃場所が記載してある場合はその位置を、湖沼や池の名前のみが記載してある場合は、国土地理院地図で名称が記載されているポイントを記録しました。
- SNS（Facebook、Twitter・Youtube）
- 野鳥観察ブログ
- 新聞記事
- 自治体HP
- 会社等HP
- 種類同定のミスを防ぐため、写真で確認できた情報を記録
- SNSは都市部の情報が非常に多いため、実際の生息状況よりも都市部に生息情報が偏る傾向があります。
生息情報
SNS（Facebook・Twitter・Youtube）などでヌートリアの写真・位置情報が記録されている情報は、2012～2021年（８月末まで）では合計95件投稿されていました（※本ブログで確認できた件数）。
| 年 | 件数 |
|---|---|
| 2012年 | 5件 |
| 2013年 | 5件 |
| 2014年 | 3件 |
| 2015年 | 9件 |
| 2016年 | 11件 |
| 2017年 | 11件 |
| 2018年 | 8件 |
| 2019年 | 10件 |
| 2020年 | 12件 |
| 2021年 （８月末まで） | 21件 |
| 合計 （2021年８月末まで） | 95件 |
地図
全国
関東・中部
ヌートリアの基本的には中部地方以西に分布しており、SNS等の情報では愛知県の河川や水路・ため池などで多数の目撃情報が投稿されています。また、近年分布が拡大傾向の静岡県では、浜松市（浜名湖・佐鳴湖）などで複数の目撃情報が投稿されています。
関西・中国
関西圏では琵琶湖周辺（滋賀県）や桂川・鴨川周辺（京都府）、服部緑地公園・淀川・堂島川周辺（大阪府）、昆陽池・加古川周辺（兵庫県）などで多くの情報が投稿されています。
中国地方では、ほぼ全域で生息が確認されており、岡山県内各地、江ノ川水系（広島県）、千代川周辺（鳥取県）、宍道湖周辺（島根県）、節野川・三隅川・木屋川周辺（山口県）で多くの情報が投稿されています。
