冬季には積雪があり、寒波が訪れるとあたり一面が銀世界になります。そんな白銀のキャンバスには、普段では残りづらい野鳥の足跡が観察できます。そこで本記事では、雪に残る野鳥の足跡や痕跡について紹介します。
記事の内容
・雪原に残る野鳥の足跡と痕跡
・野鳥の歩き方と足の特徴
雪原に残る野鳥の足跡
寒波が訪れると、あたり一面が銀世界になりますが、そんな白銀のキャンバスには普段では観察しにくい野鳥の足跡を確認できます。野鳥の足跡は新雪や積雪量が多いとき、凍結した雪のときでは足跡が残りづらいですが、表面が適度に溶けた状態の雪質では足跡が残りやすいです。
野鳥の歩き方・足跡
野鳥の歩き方には足を交互に動かすウォーキング、両足をそろえてはねるホッピング、ウォーキングとホッピングの両方を使う3種類があります。
鳥の足には指が3本または4本あるものがほとんどです。種類によって趾(あしゆび)の向きや長さ・数に違いがありますが、日本の鳥では主に8つのパターンが見られます(小宮・杉田,2012)。
ウォーキング
ウォーキングは人間が歩くときのように足を交互に動かして歩く方法で、カモ類やサギ類などの水鳥やキジ類・ハト類などにみられます。
地面に降りて歩きながら落ち葉や枯れ草の下にある虫や種子などを採餌する姿を観察することができます。
マガモ
マガモは冬鳥として全国に渡来し、湖沼・池・河川・河口・海岸などに生息します(斎藤,2017)。冬季には水田で二番穂(ひこばえ)などを採食しています。
マガモの足は前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足(さんぜんしそく)であり、第2趾と第3趾・第3趾と第4趾の間に膜(水かき)がある標準蹼(ひょうじゅんぼく)と呼ばれています(小宮・杉田,2012)。カモ類の足は泳ぎや潜り、歩き、舵を取るとき、着陸(水)時にはブレーキとなります。
特徴
・前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足
・第2趾と第3趾・第3趾と第4趾の間に膜(水かき)がある標準蹼
マガモの足跡は、やわらかい泥の上や雪の上で観察することができます。法面の傾斜の緩い河川や用水路ではマガモが陸地に歩いて上がってくるため、河川沿いの水田付近では足跡を観察しやすいです。足跡を観察すると、前側に膜(水かき)があるため、幅の広い逆三角形のような足跡がついています。
観察ポイント
・やわらかい泥の上や雪の上
・傾斜の緩い河川法面や水田などで観察しやすい
マガモの足跡(雪原)
ヒバリ
ヒバリは留鳥として九州以北で繁殖しますが、北海道では夏鳥です(沖縄では旅鳥または冬鳥)(斎藤,2017)。身近な野鳥であり、草地や砂地・農耕地などに生息します。
ヒバリの足は前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足(さんぜんしそく)であり、後側の第1趾が長いのが特徴的です(小宮・杉田,2012)。積雪があった際は路肩のイネ科草本や田んぼの二番穂(ひこばえ)を採食している姿を観察できます。この観察地では新雪で風あたりが強かったため、足跡は観察できず。
特徴
・前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足
・後側の第1趾が長いのが特徴的
ホッピング
ホッピングは、鳥の特徴的な歩き方で、一度に両足を跳ね上げて進む方法です。スズメなど多くの野鳥がこの方法を使用し、飛び跳ねながら移動します。
スズメ
スズメは留鳥として小笠原諸島を除く全国に分布し、市街地から農耕地・山地まで人家のあるところに生息します(斎藤,2017)。
スズメの足は前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足(さんぜんしそく)であり、第1〜4趾が同じくらいの大きさです(小宮・杉田,2012)。冬季には道路や河川法面のイネ科草本や田んぼの二番穂(ひこばえ)を大規模な群れで採食している姿を観察できます。この観察地では新雪で風あたりが強く足跡は観察できず。
特徴
・前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足
両方:ウォーキング・ホッピング
足を交互に動かして歩くウォーキングと、一度に両足を跳ね上げて進むホッピングを両方用いる野鳥もいます。主にツグミ類やカラス類などはウォーキングとホッピングを使い分けながら地面を歩いて(跳ねて)います。
ツグミ
ツグミは冬鳥または旅鳥として全国に渡来し、平地から山地の林、農耕地、都市公園、河原などに生息しています(斎藤,2017)。
特徴
・前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足
ツグミの足は前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足(さんぜんしそく)であり、第1〜4趾の大きさのバランスが良いしっかりとした趾をもっています(小宮・杉田,2012)。ツグミの足跡は、やわらかい泥の上や雪の上で観察することができます。積雪があった際は雪が溶けやすい河川敷などで群れて採食している姿を観察できます。
観察ポイント
・やわらかい泥の上や雪の上
・公園や河川敷などが観察しやすい
ツグミの足跡(雪原)
ツグミの採食跡
ハシボソガラス
ハシボソガラスは農耕地や河川敷等に積もった雪を掘り起こして採食します。農耕地等では群れて採食している姿を観察することができます。
ハシボソガラスの足は前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足(さんぜんしそく)であり、後側の第1趾が大きく発達しています(小宮・杉田,2012)。つかみ、握り、歩き、おさえることに使われます。
特徴
・前側の第2〜4趾と後ろ側の第1趾からなる三前趾足
・後側の第1趾が大きく発達している
ハシボソガラスの足跡(雪原)
参考文献
- 小宮輝之・杉田平三(2012). 鳥の足型・足跡ハンドブック. 株式会社文一総合出版.
- 森茂之,山中成元,河村久紀. 水稲ヒコバエの生育と野生獣による採食の実態およびその生育量を減らす営農管理技術. 2011.
- 斎藤 博(2017).フィールド図鑑 日本の野鳥 第2版.株式会社 文一総合出版.