スズメ(Passer montanus)はスズメ目スズメ科スズメ属に分類される鳥類で、人間の生活圏に生息する野鳥です。ユーラシア大陸の広い範囲に分布し、日本では留鳥として小笠原諸島を除く全国に分布しています。市街地・農耕地・山地などの人家がある環境に生息しています。
日本に生息するスズメ
日本にはスズメ・ニュウナイスズメの2種類のスズメ類が生息しています。スズメ(Passer montanus)はスズメ目スズメ科に属する鳥類であり、体長は約14cmで雌雄同色です。成長は頭部が茶褐色で、顔から首周りは白く、ほおに黒斑があります。留鳥として小笠原諸島を除く全国に分布し、市街地や農耕地・山地まで人家があるところに生息しています。
一方、ニュウナイスズメは北海道や中部以北で繁殖し、関東地方以南で越冬し、森林地帯などの環境に好んで生息します。
食性
スズメはイネ科の草本の種子などを中心とした雑食性で、植物の種子や昆虫類などを採食します。
市街地では、人間の生活に密接に関わるため、ゴミ箱などから食べ物を得ることもあります。繁殖期には育雛のために昆虫類を多く採食することが報告されています。秋季にはイネの食害も発生させますが、イネの害虫も食べるなど、益鳥・害鳥の両面の性質があります。
春
ウメの花に集まるスズメ
ウメの花をちぎって蜜を吸っています。
(受粉を行わず花の蜜のみを食べることから、盗蜜と呼ばれています)
サクラの花に集まるスズメ
サクラの花くわえて蜜を吸っています。
夏
蛾の幼虫を採食するスズメ
昆虫(成虫)を採食するスズメ
秋
カキを採食するスズメ
冬
雪原のイネ科草本の種子を採食
繁殖生態
繁殖期・営巣場所
スズメは3月から8月にかけて繁殖期を迎え(渡部&安江,1977、加藤ほか,2013)、年に1〜3回の繁殖を行います(加藤ほか,2013)。家屋や建物の隙間(民家や小屋・立体駐車場等)・電柱の部品・農業用施設に巣を作ります。コシアカツバメやコゲラ・カワセミの巣穴を利用して繁殖することもあります(加藤ほか,2013., 今西,1993., 兼常, 1920)。
電柱の部品のすき間に営巣
信号機の支柱すき間に営巣
建物のすき間に営巣
コシアカツバメの巣に営巣
巣材
巣材としてイネ科の雑草や乾燥したわらを主とし、小枝・樹皮・動物の毛・野鳥の羽・人工物(セロファンなど)が利用されます(観察結果、渡部 & 安江,1977)。
巣材の羽毛を搬入
一腹産卵数・巣立ち数
スズメの産卵数・巣立ち数は地域や繁殖年・季節によって異なり、一腹産卵数は岡山県で4.9 ± 0.1卵であると報告されています(渡部 & 安江, 1997)。抱卵日数は10〜15日、育雛日数は12〜17日で巣立ちを迎えます(渡部 & 安江, 1997)。卵からひなが生まれると、『チュン・チュン』とリズミカルに親を呼ぶ声が聞こえてきます。
巣立ち後もしばらくは親鳥について行って餌をもらいますが、徐々に独り立ちして親鳥から離れ自分で餌を探すようになります。
巣立ち直後の幼鳥
特徴:くちばしが黄色、尾が短い、成鳥より淡い色
スズメの観察場所
市街地
電線・電柱
市街地から農耕地・山間部に至るまで、人間が生活する地域に張り巡らされている電柱や電線にとまるスズメの姿を観察できます。特に、冬季の農耕地(特に水田)付近の電柱・電線に集団でとまる姿を観察することができます。
公園
農耕地
水田
冬季には水田の二番穂を集団で採食する姿を観察することができます。集団で飛び立つスズメの姿はひとつの大きな生き物のようで圧倒されます。
河川・湖沼
引用文献
- 蛯名純一, 坂有希子, 東信行 & 三上かつ. (2015). 青森県三沢市で同所的に繁殖したニュウナイスズメとスズメ. Bird Research, 11, S1-S7.
- 福田道雄. (2012). 東京都上野動物園におけるスズメの巣内ヒナ数. Bird Research, 8, S15-S18.
- 今西貞夫. (1993). カワセミの巣穴を利用したスズメPasser montanus. Strix, 12, 239-242.
- 加藤貴大, 松井晋, 笠原里恵, 森本元, 三上修 & 上田恵介. (2013). 都市部と農村部におけるスズメの営巣環境, 繁殖時期および巣の空間配置の比較. 日本鳥学会誌, 62(1), 16-23.
- 兼常彌富. (1920). コシアカツバメの巣にスズメ營巣す. 鳥, 2(10), 320a-320a.
- 渡部尚久 & 安江安宣. (1977). スズメ Passer montanus saturatus STEJNEGER の繁殖, 給餌ならびに探餌活動に関する生態学的研究. 農学研究, 56(1), 49-70.
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